その480 廃用 2018.6.27
2018/06/27
病院で使う言葉に廃用症候群というのがある。
病気などの様々な理由で体の一部や全体を使わなくなった結果、
病気でなかった部分も動かせなくなったり、体全体が衰えることを言う。
こうなるのを防ぐために病院や介護施設では、病気になってもできるだけ早くベッドから離れましょう、
リハビリを行いましょう、と頑張っているところだ。
先ごろ、室戸にある廃校水族館へ行ってきた。
遠い。けど面白い。
ネットで室戸岬町にあることを知って出発。
岬の突端へ行くまでに表示が出るだろうと思っていたら、そんな表示はない。
途中にある学校らしい所に寄ってみたら、現役バリバリの小学校だった。
おや、変だね。ネットでもう一度確認。
正確な地図が見当たらなかったので、所在地をカーナビに入れると、
岬を徳島側に回ってさらに先であることが分かった。
深層水利用の工場群を過ぎて、三高小学校も過ぎて、椎名というところにあった。室戸岬から約9km。
駐車場はほぼ満杯。意外にも冷房の効いた受付から2階へ。
昔メダカや金魚を飼った小さな水槽を並べたものかと思ったら、
直径4メートルぐらいはありそうな円筒形の大きな水槽や、酸素がブクブクしている長い水槽に
ウツボが鋭い口を開けていたり、蛇口の並んだかつての手洗い場にはナマコがいて触ることができる。
テレビでも紹介されたが、外の25メートルプールにはウミガメやエイ、シュモクザメや小魚が本当に自由に泳いでいる。
私は動物園より水族館の方が好きだ。
自然の環境に適応して動物も魚も姿を変えているのだが、
魚やエビ、貝などには独特の”けったいな”適応をなしとげたものが多い。
だが、この廃校水族館にはそういう面白さとは別の物がある。
魚にそれほど詳しくない我々一般人には、特別珍しい魚はあまり必要でない。
この水族館は、室戸の魚というコンテンツを包む学校と言う雰囲気の存在が大きい。
大人にとって、かつての小学校時代のことがよみがえる。
さほど古い小学校ではないが、高齢の方にも自分の子や孫を連れて行き、迎えに来た記憶が重なるのではないか。
子ども達には、学校の教室や廊下、プールのすぐ手が届きそうなところに魚が泳いでいる、
触れるナマコもいることはとても新鮮だろう。
「廃用」は「使わなくなって廃れる」のが言葉としての意味だが、
「廃れる」を「用いる」ことを考えたこの水族館はすごい。
行ってみようという方のために。
室戸岬観光をパスするならば、岬をショートカットして椎名の南側に出る県道202号線もあります。