その524 寒天 2022.4.20

2022/04/20

 安芸市と馬路村の間を通る猿押林道へ行こうと思ったら、林道に入る所で通行止めだった。
いつまでの期間など、通常は表示が出ているのだが、
ぶっきらぼうな通せんぼのパイプがあるばかり。
仕方がないのでUターンして安芸の東山森林公園へ。
 
 駐車場から少し散策するつもりで遊歩道を歩く。
園内にはヤマモモの道、こもれびの道など多くの道が巡らされている。
公園の外周を北上して頂上まで行こうと考えた。
南を見下ろすと安芸の町と広々とした太平洋が見える。
頂上まであと900メートルの所まで登ったが、そこから道は一旦下って再度登り返す様子。
今日はあまり根性がなくてここで引き返すことにした。
 
 途中の小ピークに水たまりがあった。
中にはカエルの卵が。
薄黄色のタピオカのような寒天質の中に近い将来オタマジャクシとなる黒い点があって、
両手ですくってもこぼれそうなくらい大量の塊になっている。
最近好天が続いたせいだろう、寒天が水面から出ているところもある。
多くのオタマジャクシの無事な誕生を願っておいた。
 
 通ってきた外周の道は少し遠いので、園内を通るハギの道というショートカットを進むことにした。
割と急な下りで、やがて道は谷筋に出合う。
谷筋に沿って下るのが元の駐車場への方向のようだが、
人が通るような踏み跡がだんだんなくなっていく。
水はほとんどないが、堰のような構造がいくつかあって、
これはちょっと降りれんぞ、となった。
 
 谷筋に出合うところまで登り返して道を探る。
どうもよくわからん、と思っていたところへ、上から人の声がする。
私が通ってきた下り道を二人の男性がやってくる。
声をかけて、「この先、道がなくなるようなんですよ。」と言うと、
自分たちはこれから登るところだ、とのこと。
おや、私は帰ろうとしていて、彼らは行こうとしている。
彼らの数年前の記憶では、このあたりは下ってもう一度登る道だという。
遊歩道とはとても言えない道を登っていくと
やがて「山頂あっち」、「駐車場こっち」の標識があった。
おかしなことよ。私が途中のどこかで間違えたのだろう。
彼らと別れたのち、かなり笹の繁る道となったがひょっこりと外周の道に出た。
 
 道迷いをするとわずか10分ぐらいのウロウロでもかなり疲れる。
その夜、山をさまよっている自分とカエルの卵の寒天が交錯する夢を見た。
 
 翌日は雨。
カエルの卵に恵みの雨となるか。寒天の慈雨、なんて。