その532 文鎮と和紙 2023.3.21

2023/03/21

 初めて文鎮を使ったのは、小学校の書道の時。
昭和の後半世代の人の多くがそうではないかと思う。
四角く細長い、銀色の金属棒で、中央に持つための出っ張りがあって、足に落とすと痛いヤツ。
高校、大学と、書道と縁がなくなってもなぜか文鎮だけは実家に残っている。
 
 調べ物をするときに、いくつかの本を開いて置きたい。
そのままでは本は閉じてしまう。
そんな時に文鎮は重宝だが、書道の文鎮は少し長すぎる。
 
 私の机には、手のひらに入るほどのクジラの形の文鎮が置いてある。
もう一つ、セロテープの台も文鎮として使うことがある。
机の隅でクジラとセロテープ台が並んでジッと控えているのは健気だ。
 
 書道には依然縁がないが、和紙を手にする機会があった。
少し厚手のもので何という名の和紙かわからないが、写真のプリントに使ってみた。
そのままプリンターに入れると、シワになって送られずに失敗。
コピー紙を重ねて隅に和紙を両面テープで貼ってみたが、
これもシワになり、はがすのも難しくて失敗。
写真のプリント用紙の下端に両面テープで貼ってみると、紙送りは順調。
インクが乾く前にそっとはがすと和紙の裏面は少し薄くなるが、大きな問題はないようだ。
湿った土の上のネコの足跡は、普通のプリント用紙では固い色調で、事件の証拠写真のようだが、
和紙にプリントすると、土の湿り気や柔らかさが感じられる。
ネコがちょいと嫌がりながら、テイテイっと歩いた様子が目に浮かぶ。
 
 シワでボツになった和紙にクジラの文鎮を置いて、今週の予定を書いてみた。
万年筆のインクはすぐに和紙に浸み込む。
筆圧のぐあいが線の太さに現れる。
字は下手なのに、作家になった気分だ。
そして和紙に触れた指の感触が良い。
いつも書く予定表だが気持ちを込めて書こう、という気になる。
今週も来週も、その次の週も良いことがありますように。