その542 知らんこと 2024.9.26
2024/09/26
山の薄暗く湿った場所で、
足が細くてクモのようでクモではない昆虫に出会うことがある。
ジブリの映画に出てきそうな感じなのだが、何という虫か知らなかった。
9/21の日経新聞に、この虫を50年以上研究されてきた鶴崎さんという方が、
ご自分の著書を紹介する記事が載っていた。
ザトウムシというそうだ。
私の手元にある子供用の昆虫図鑑では、
クモのページの隅に「ざとうむし の なかま」として
「なみざとうむし」の絵が1カットだけ載っている。
私がよく見かけるのは黒い脚、小さな黒い体のザトウムシなので、
図鑑のナミザトウムシかもしれないが、
調べてみると赤いものやオレンジ色のザトウムシもいるようだ。
知らんかった。
越知町の横倉山で、8月下旬のこと。
登山道わきにベチャッと存在する焦げ茶色の物体があった。
おそらく動物がお尻から落としていったものだろう。
その物体に近づいてよく見ると、全体に少し光沢があってあまり臭くはない。
2x1mmほどの透明なカプセルのようなものが、たくさん含まれている。
そのカプセルがそれぞれ曲がったり伸びたり蠢いている。
少し採取して持ち帰って顕微鏡で見たい衝動にかられたが、
エイリアンの卵を連れて帰ることになるかも、と断念。
やはり気になって、1週間後にもう一度その焦げ茶色の物体があった場所へ行ってみた。
残念ながら見つけることはできなかった。
あれは何だったのか。わからん。
私の祖父は稲作などの農業をしていた人だが、
俳句をたしなむこともあり、当時には珍しい教育パパだったそうだ。
若い頃は母たち姉妹に
「知らんもんの、倍、知らんのう。」
と言いながら勉強を教えたそうだ。
晩年に軽い脳卒中を起こし、字が乱れるようになった。
私が祖父に手紙を書いた時、お恥ずかしい話だが
拝啓と敬具のケイの字を間違えていたことがあった。
無理をして書いてくれた返事にこうあった。
「拝啓」はこれから物を言うから大きい口、
「敬具」は言うことを終わるから小さい口ですよ、と。
知らんことは世の中にたくさんある。
自然界のこと、歴史のこと、世界のこと、経済のこと等々、広い海のようだ。
ヒトの体のこともそうだ。
書物で調べたり人に聞いたり、ネットを使ったりと、
現代ではいろいろな方法で調べることができる。
チクチク調べるのは好きな方だが、知ったふりと知らんふりはしないでおこうと思う。