上中下

2005/10/28

上品、下品ということばがある。
その元をたどると、極楽浄土に往生するものを、
生前に積んだ功徳によって上品(じょうぼん)、中品(ちゅうぼん)、下品(げぼん)という
三階級に分けたことから来ているらしい。
連歌の品定めにも、この言葉が使われている。
日本人は物事を上中下に分けるのが好きだ。
西洋とちがって、「中」の入るところが日本人らしい。
成績は「中の上」とか、あんなのは「下の下」などと使われる。

医者にも上中下があることを知った。
「上医は国を医し、中医は人を医し、下医は病を医す」という言葉が、
立花隆氏の書いた文章(文芸春秋9月号)に載っている。
詩人で医学者でもあった木下杢太郎が
第二次大戦後期に東大で医学生に向かって板書したという。
元々の「上医は国を医(いや)す」というのは、
中国古代の春秋時代の書物「国語」が出典のようである。
意味は、上医は国の戦乱や疲れた制度を治し、中医は人を治し、
下医は病しか治さない、といったことであろう。

絶えず中医であることは、かなりの修業が必要で、
感情のある人間は、ほころびが出てしまう。
私など、ストレスがたまるとすぐに中医失格のレッドカードが出るだろう。

学生の頃、泌尿器科の先生が講義で言っておられた。
「医者は上の方を診る医者ほど偉いと思われる。
脳外科は神様。胸部外科や循環器や呼吸器も神様。
消化器が少し下がって、我々はもっと下の方。」と。
もちろん冗談であって、どの領域、どの臓器も大切で、
また全部そろって健全でありたいものです。
人を医す中医はむずかしいけれど、全体に目を向ける中医ならば、なんとかできそうです。
また、明日から頑張りましょう、と思います。


コメント

選挙に出て上医になろうとする医者もおりますが、あの世界は大変なようで。