津野山神楽
2010/03/24
あるパーティーで宴半ばに行われた津野山神楽を見る機会があった。
ステージの左手に囃し手が四人。大太鼓と小太鼓、チャリンチャリンという金物に、横笛の奏者である。
はじめは鬼の出番であるが、面の上から黒い衣をかぶって低く舞う。
しだいに舞は盛り上がって、鬼は衣を取り去り、一本、二本と刀を抜いて狂乱の様相。
囃し手のリズムは、最初からほとんど変わらないが、音量が徐々に盛り上がる。
小太鼓と金物の奏者は、正座した膝の上で小刻みに体を揺らしながら一心に叩く。
鬼の乱舞が結末を迎えると、一瞬の休止の後、客席後ろから、
「イヨッ、ドーモッ」という感じで恵比寿様が入場。
扇を開き、竿をかついで上機嫌の登場である。
恵比寿様はもちろん無言なのだが、客席からは拍手が湧きおこる。
舞台の上では大物の鯛を釣りにかかる舞を披露。
この時の囃しは、鬼の時と変わらなかったのではあるまいか。
おなじリズムでも陽気に聴こえる。
めでたく大鯛を釣り上げて、この出前の神楽はお開きとなった。
二人の舞手と囃し手がステージから引き揚げたところを、トイレに行っていた私は見かけた。
舞手は面をかぶり、素肌を見せぬよう長袖の衣装を着こんでいるので、
二人とも息が上がって大変そう。
囃し手も白髪の目立つ方が多く、約20分も身体全体でリズミカルな演奏を続けた体力には驚かされる。
調べてみると、津野山神楽は全部で18節あり、通しでやると8時間もかかるというから、
20分ぐらいは序の口であろうけれど、是非現地へ行って観てみたいものだ。
伝統ある津野山神楽と下町の獅子舞を比べたら、津野山神楽に申し訳ないけれど、
子供の頃に見た小さな商店街の獅子舞は恐ろしかった。
子供たちはプラスチックの刀を腰に差して、得意げに振り回していた頃だったが、
そんな刀を抜く気力もなくなるほど、獅子の顔は大きく黒く、この世のものとは思えなかった。
私は泣きながら八百屋の奥へと逃げ込んだが、獅子は目ざとく追いかけてきた。
お神楽のパーティーの夜、そんな夢を見てはっと目覚めてしまいました。
コメント
泣きながら八百屋の奥へ逃げ込んだのは、昭和39年東京オリンピックの聖火ランナーが、朝倉駅から電車通りを東へ走った頃で、私が3歳の時、今から45年ほど前のことだと思うのですが、子供の頃の強烈な記憶は消えないものですね。